ゴーストライターはここまで書く……という実態(Business Media 誠)

 ここ数回、ゴーストライターについて書いた。その間、主要出版社の編集長ら役職者15〜20人前後から、次のような質問をいただいた。

 それは「ビジネス書の中に書かれてあるコンテンツは、“著者のもの”と言い切ることができるのかどうか」というもの。この場合のコンテンツとは、その「著者」のノウハウなどを意味する。

 ビジネス書のノウハウと聞くと、例えば「ビジネス文書の書き方」や「報告・連絡・相談の仕方」などが思いつくだろう。管理職や経営者層は「チームビルディング」、つまり、チームをどのように作り、引っ張るかということをテーマにしたビジネス書を思い出すのかもしれない。

 編集長たちの質問は、いまのビジネス書のあり方を痛烈に批判したものであり、意味が深い。自身のキャリアは20年前後なのでベテランと自負しているが、問いに答えるのは難しかった。まず、私の考えはこうである。

 「コンテンツは、“著者のもの”と言い切ることができない場合が多々ある。だからこそ、関係者の役割分担と権限の責任の明確化をしないと、大きな問題になる」

 その理由として、以下を挙げた。

(1)本を作る最初の段階である「章立て」の時点で、すでに実際の執筆者であるライターや編集者の意向(考え、思惑)が入り過ぎている。

(2)取材のときに「著者」が何をどう答えていいのかよく分かっていない。特に「どう答えるか」のところが致命的。ほとんどの人がまったく理解していない。

(3)読者が求めているものについて、「著者」とライターと編集者の三者で合意がない。

●「章立て」をどうすればいいのか

 ほかにも3つほどあるが、ここでは省略する。1〜3を詳しく見ていきたい。

 1の「章立て」であるが、これを著者に書かせるのは酷である。そもそも本を書くことができないから、ゴーストライターを使うのである。にも関わらず、主要出版社の一部の編集者は「とりあえず、ご自身が書きたいものを並べてください」などと言い、「章立て」らしきものを書かせている。

 しばらく後で、私のところにそれが送られてくる。それを見ると、やはり本の構造を理解していない。こういうルートで70人前後の著者のものを見たが、合格点に達していたのは2人だけだった。

 本来、ビジネス書は1〜5章ほど(いくつでも構わない)のパートに分かれる。その上で、それぞれの章の中に節(せつ)がいくつもある。大体、1つの章につき、少なくて5つ、多いときは10前後の節が並ぶ。この章と節の組み立てが大切なのである。

 ほとんどの著者が書いた「章立て」らしきものには、同じ意味合いの章が2〜3つ並んでいた。さらにテーマとはかけ離れた章も入る。節になると、破たんしている。数は少なくとも、40は欲しい。だが、そこまで達するのは15人に1人くらい。多くの人は20前後の節を書き出すのが、精一杯である。たとえ数が多くとも、同じ意味合いのものであったり、その章のテーマとは無関係のものが多い。そこで、ライターの出番なのである。

 このようなとき、私の経験でいえば著者の過去の本やブログなどに目を通す。取材を受けた経験があるならば、そのときの記事なども読む。これらの作業により、節を40〜50前後まで書き加える。その上で章立てを組み立て直す。そして、また節の入れ換えをする。これをくり返すこと、5〜6回。このくらいまでしないと、たたき台にはなりえない。ここで私がよく思うことは、「ここまでやると、もはや著者のコンテンツとは言い難い」ということ。

 ひどい場合は、ほかの著者や論文などから節を見つけ出し、あたかもその著者のものとして書き加えることすらある。時おり、他の著書の“パクリ”として問題になる理由の1つはこのあたりにある、と私は十数年前から確信している。

 本来、このたたき台をもとに、著者が「これをこうしよう」とチェックできれば問題にはならない。ところが、著者の3人に1人は何も言わない。いや、言えない。大体、口にするセリフは「(ライターが書いた)原稿を見てみないと、分からない」。ほかの著者も何かを言うのだが、本の構造を分かっていないから、こちらが分かるようには説明できない。これが、ビジネス書の裏側の一断面である。

●取材のときにどう答えるべきか

 次に2の「取材のときにどう答えるかを分かっていない」である。ここまで説明した「章立て」で、著者とライター、編集者の合意がなく、破たんしている以上、いざ取材になってもうまくいかないのは当たり前なのかもしれない。

 取材は、通常「章立て」に沿って、つまり1章から最後の章までの節について、こちらが質問をして聞き出していく。1回の取材時間は2時間ほど。それが5回ほどになるので、計10時間前後。この場合、聞くというレベルではなく、「聞き出す」という表現に近い。取材のマナーから言うと、これは好ましくない。

 しかし、著者の考えがあいまいである場合が多い。さらに節がどのように作られるかを知らないから、著者はメリハリをきかせて答えることができない。例えば、せめてこのくらいの論理を持って話をしてほしい。

 「この節で、自分はこれをポイントとする。それを裏付ける事実としてこの3つがある。そのうちの1つを節の前半できっちりと説明する。後半で2つの事実にさらりと触れる。ラストにもう一度、ポイントをくり返して終える」

 この域に達している著者は若いころに10〜15冊前後は、自ら書いた経験がある人だ。私の経験で言えば、70人ほどの著者のうち2〜3人。結局、この取材のときにもっとも問題であるのは、著者が1つの節を構成するだけの深さ(掲載するのは通常1000字ほどなので、少なくとも取材時には2500字ほどは話して欲しい)を知らないことである。

●読者が求めているもの

 3の「読者が求めているものについて、著者とライターと編集者の三者で合意がない」ことに触れたい。この「読者が求めているもの」が大切である。

 まず、著者が「読者が求めているもの」を分かっていないことが多い。例えば、著名なコンサルタントは、取材のとき、マズローの欲求階層説について1時間話した。まさに独演会であったが、読者である会社員はそのようなものを求めていない。仮にマズローの欲求階層説を本に盛り込むならば、そのうちの「承認の欲求」を取り出し、このようなことを話したほうがいい。

 「会社は、社員を辞めさせるときに“承認の欲求”を潰すことで、精神的になえさせ、辞表を出させようとします。例えば、皆がいる前で、上司がその社員のミスをあげつらう。そうすることで、その人の“認めてもらいたい”という願望を潰すのです」

 こう答えると、マズローの欲求階層説の理論を説明するよりも、会社員には心理的に近い内容となる。自分に近い内容にならないと、購買意欲はわかない。コンサルタントは、ふだん経営者や役員、部長クラスとしか合わないから、現場で働く会社員のことが分からない。だから、観念論になりがち。主要出版社Kの副編集長は「コンサルタント、学者、経営者、タレントなどの大半が落ちない」という。

 この「落ちない」とは、読者である会社員の心にストーンと落ちる内容を話すことができないことを意味する。おのずと、こちらは「聞き出す」取材をせざるを得ないのだ。

 ここまでのことをすると、「ビジネス書の中に書かれてあるコンテンツは、“著者のもの”」と私は言い切ることができない。【吉田典史】

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徳之島の3町長「反対する民意変わらない」(読売新聞)

 沖縄県の米軍普天間飛行場移設問題で、ヘリコプター部隊の訓練移転先として「徳之島」が明記された日米両政府の共同文書が発表された28日、鹿児島県・徳之島の3町長は「移転に反対する民意は変わらない」と改めて受け入れ拒否を明言した。

 地元の反対を無視した形で盛り込まれた徳之島案。町長らは「これは政府との闘い。島民の総意で勝ち抜いていく」と対決姿勢を鮮明にした。

 3町長は28日午後、県庁知事室で伊藤祐一郎知事と今後の対応を協議した。協議は約40分間、非公開で行われた。

 3町長によると、伊藤知事が「これからも民意を守っていく」と発言し、4人で足並みをそろえて政府に反対の意向を伝えることを確認した。

 協議後に記者会見した3町長は、共同文書と政府の対応を口々に批判した。

 大久保明・伊仙町長は、「5月末決着」にこだわった鳩山首相の姿勢を「参院選に向けて政府の事情があったのだろう」と分析した上で、「7日に鳩山首相に絶対的な(反対の)民意を伝えた。首相は『民事は大事だ』と言ったのに、共同文書は民意を無視した」と厳しく指弾した。

 平野官房長官が16日に移転推進派の島民らと会談したことにも触れ、「島民の気持ちはますます反対に向かっている。民意が変わることはない」と強調した。

 大久幸助・天城町長は「国策といえども、政府が民意を抑えつけようとした場合、成田闘争以上に(激しく抵抗することに)なるだろう」とけん制。高岡秀規・徳之島町長は「本当に徳之島で訓練をやる意味があるのか、政府と意見交換をしないといけない」と対話に応じる姿勢を見せながらも、「民意は断固反対だということを伝え、しっかり反対する」と断言した。

 3町長と伊藤知事は6月10日までに再度、首相官邸で政府側と会談する予定。7日は約2万6000人分の反対署名を鳩山首相に手渡したが、その後に集まった約1万5000人分の署名を提出するという。(浦郷明生、中西瑛)

 ◆鹿屋市長、困惑…沖縄県外への米軍の訓練移転◆

 共同文書には、沖縄県外への米軍の訓練移転について、「日本本土の自衛隊の施設・区域も活用され得る」との項目も盛り込まれた。

 海上自衛隊鹿屋航空基地のある鹿児島県鹿屋市の嶋田芳博市長は「具体的な移転の場所や部隊の規模、訓練の内容など何も示さないやり方はまずいのではないか。どう対応していいのかわからない」と困惑した表情を見せた。

 共同文書には、2006年に発表された「日米ロードマップ」に記された在日米軍の再編案を「着実に実施する決意を確認した」とも明記された。再編案は、普天間飛行場の空中給油機部隊が訓練などのために鹿屋基地に定期的に展開することを盛り込んでいる。

 嶋田市長は「訓練内容など130項目以上の質問を国にしているが、まだ回答がない。市議会が反対決議をしており、現時点では訓練移転に反対というのが市の立場だ」と述べた。

 「鹿屋に米軍はいらない大隅住民の会」の松元勇事務局長(65)は「共同文書は鹿屋基地に新たな負担を強いるもので、絶対に受け入れられない。期待していただけに裏切られたという思いが強い」と批判した。(赤井孝和)

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